肋骨疲労骨折の予防-Boathouse Doc | LIBRARY | 東北大学漕艇部

ボートハウスドック様

肋骨疲労骨折を予防するトレーニングの方法やエクササイズが有れば教えて下さい。(中東部のコーチ)



コーチ殿

肋骨疲労骨折は他の疲労骨折と同様にオーバーユースによるもので二次的に肋骨に過度のストレスがかかることによって発生します。一般的には第5肋骨から第9肋骨にかけて発生し、水上トレーニングでもエルゴのどちらでも高強度のトレーニング期間に発生します。まず予防の第1は肋骨に過度のストレスをかけないことです。たとえば、逆流または逆風での低レートでの長距離ステディステートローイングなどです。このような時にはクラム(意味不明)が負荷を軽減して、肋骨へのストレスを防ぐのに役立つかもしれません。エルゴでも同様に低レートで長いピースを行うときはダンパーを3よりも高く(軽く)セットしたほうがよいでしょう。

トレーニングテクニックを改めるのに加え、肋骨強化エクササイズをサーキットトレーニングのプログラムに加えることをおすすめします。エクササイズは前鋸筋を強化するよう考えられています。前鋸筋は肩胛骨を安定化するのに重要で外腹斜筋とともにローイングでは肋骨を変形させる主な力となります。

肋骨強化と疲労骨折予防に役立つと思われる4つのエクササイズを紹介します。

No.1: Push up plus(プッシュアッププラス)

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選手はうつ伏せになり足は床につけるかベンチのうえにおきます。
腕はまっすぐにしたままで、肩と背中を同じ高さで水平にします。背中がまるくせり上がるようにプッシュします。
7秒静止したのち、ゆっくりリラックスします。
10-20回繰り返して1-3分休みを、2-3セット行います。

No.2: Serratus press(前鋸筋プレス)

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選手は仰向けに寝るか、45度の傾斜台に仰向けになります。
ウェイトをもって肘は完全に伸ばして胸の上の中央にかかげます。ウエイトを天井に向かって突き上げます。
突き上げを5-7秒間保持しゆっくりリラックスします。1セットが終わるまで決して肘を曲げてはいけません。
10-20回繰り返して1-3分休みを、2-3セット行います。

No.3: Upper extremity step up(上肢のステップアップ)

これは肩甲骨周囲の筋肉を強化する、エクササイズです。高さは調整が必要です。最初は2インチ(5cm)からはじめて2インチずつ高くしていきます。体の姿勢は最初は膝を床についた状態からはじめて、のちに完全な腕立て(full push up position、写真)として、数週間後には足を台にのせた姿勢とします。姿勢を変えたり負荷を増量するまえに、腕を真っ直ぐにして、肩と背中が同じ高さになるような正しい姿勢を守る必要があります。
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選手は腕立て(push up、腕を真っ直ぐ伸ばし肩と背中を同じ高さとしてステップに向かう)の姿勢とします。
選手の体重はステップしている間はもう一方の腕にかかります。
反対の腕もステップにのせます。そうすると両方の腕がステップの上にのります。
腕を変えながらステップを降ります。
10-20回繰り返して1-3分の休みを、2-3セットおこないます。負荷は20-30回を4-5セットまであげられます。
さらにチャレンジするなら、ぐらぐら板とかスイスボールとかを使って不安定なベースの上でエクササイズを行うことで強度をあげることが可能です。また、手押し車レースなどはこのエクササイズの効果をあげる方法として効果的でしょう。

No.4: Serratus Rhythmic Stabilization (前鋸筋安定化訓練)

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選手は座るかまたは良い姿勢で真っ直ぐ立ちます。
腕を真っ直ぐ前方に90度挙上します。そこで、ウェイトを前方にプレス/ プッシュします。
前方にウェイトを保持している間、手でアルファベットとか☆の形を描きます。肘は真っ直ぐ伸ばしてロックした状態をキープします。
10-20回の繰り返しを1-3分の休みをはさんで、2-3セット行います。


訳者注:

最近、肋骨疲労骨折を多く目にすることから何とか予防はできないかと、いろいろ考えてきました。そのなかで、過去のUS Rowingの記事に前鋸筋エクササイズの記事をみつけました。同様なものが2001年のWinter Issueにも取り上げられています。何のことはない、旧来の腕立て伏せに代表されるプレスの運動を改良し前鋸筋に焦点をあてたエクササイズですが、疲労骨折と前鋸筋との関係を6年前に注目し取り組んでいたことに目を見開かれる思いでした。肋骨骨折の頻発部位が前鋸筋の付着部に一致することはよく知られていますが、前鋸筋を強化することによりその付着部、腱をはじめとする結合組織、肋骨も同時に強化し予防につなげようとするものです。

前鋸筋は作用方向がローイングで働く張力とは反対で、肩甲骨を前方に押し出す働きをすることが知られています。思えば、ローイングの運動には前鋸筋の働きなどあまり考えられたことがなく、引きの運動ばかりが重視され、昔からの腕立て伏せはあまりやられていないのではないでしょうか。このような背景も肋骨骨折の増加につながっているのかもしれません。チームドクターの小澤先生(整形外科)の話では、前鋸筋はローイング運動では肩甲骨を体幹に引き寄せ安定化する働きをしているとのことでした。となればローイングではかなりの負荷が肋骨付着部にかかっている可能性があり、前鋸筋の強化はそれなりの根拠をもつことになります。

もちろん、前鋸筋ばかりが肋骨疲労骨折の悪玉ではなく、前鋸筋のみでは疲労骨折のすべてを説明することは不可能ですが、すこしでもこの障害を減らせればと思い古い記事を紹介することにしたわけです。


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(解剖図の説明; 3:大胸筋、7: 小胸筋、11: 前鋸筋)

[訳: 舟山裕士, Boathouse Doc (US Rowing, October 1998)]